天天晴天:台湾ドラマと中華なドラマ

台湾ドラマや中華なドラマの感想を書いています。吳慷仁が好きです。

映画「渺渺」:花拓也前の吳慷仁-その2-

映画「ミャオミャオ(渺渺)」は2008年の作品です。

吳慷仁の初期の作品なので、いつか見たいと思っていました。

 

吳慷仁の経歴の説明によく登場する「渺渺」ですが、見終わって、花拓也前の代表作を選ぶなら確かに「渺渺」だわ、と思いました。

ちょっと切なさがあるけれど、心の中には大きな意味で愛が残り、よかった、と思わせる作品です。

 

主役は‟渺渺”を演じたアリス・クー(柯佳嬿)、

のはずなのですが、日本語のページを見ると、小璦を演じたチャン・ロンロン(張榕容)の名前が先に来ています。

 

チャン・ロンロン(張榕容)は、インタビューなどで話しているときはとてもかわいいと思うのですが、彼女独特の見た目を気にしないかのような仕草がどうも苦手で、この作品でも最初はそれが気になりました。

でも、内側から真っ直ぐに届く表現がしっかり映画を支えていて、終盤に向かっては引き込まれます。この人を監督が使いたがるのがわかるなあと思いました。

小璦に共感していなくても、彼女の存在に引っ張られていきます。

 

日本では、「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭2010」で上映された「渺渺」。

あらすじを読んでも、女の子が女の子を好きになる、という部分がメインにでてきますし、吳慷仁が好きなのは范植偉なわけで(役の上)、この映画祭のテーマに見事に合致するのですが、作品を見ると、同性への愛情はこの作品のテーマを伝える上でのツールに過ぎないとも感じます。

 

渺渺に対する小璦の思いは、この年代の女の子としてむしろ自然に思えるほどです。

父親とだけ暮らしている小璦が、同性である渺渺にひかれたとき、女の子同士の友情に、安心できる存在に甘える心や、恋愛のようなときめく心を重ねていっても不思議ではない気がします。

 

その渺渺が思いを寄せるのは、范植偉が演じる陳飛。ここだけは、男女の恋愛です。

范植偉はこういう役のとき、存在感がありますね。

渺渺は静かな女の子で、小璦より大人っぽさも女っぽさもある高校生ですが、陳飛に向ける表情がしたたかな女風で、このあたりのバランスがどうもよくありません。

異国からやってきて短期間で去っていく、そういう女の子が意外性あるキャラクターとして描かれても納得なのですが、不思議な存在であることと人物像がはっきりしないのとは違うので、欲を言えば、もうちょっと渺渺自体を充実させてほしかったです。

 

陳飛が憂鬱店主になっている原因が吳慷仁演じる貝家欣。

小貝だけは、他の3人のように新しい出発がないのですよね。そこは辛いものがあります。

 

このときの吳慷仁は短髪で、彼にしては頬がふっくらしていて、ピアス(イヤリング)なんかしているけれど、どこか素朴です。

同じく男性同士の関係を描いた「沿海岸線徵友」とは、作品自体も、彼自身のビジュアルも、同性を思うその中身も、まったく異なります

 

貝家欣の役柄上の設定はわかりませんが、吳慷仁を通して表現された貝家欣は、純粋で、魅力的で、繊細で、儚い青年でした。

こんな子に思いを寄せられて返せないまま去られたら、容易には受け止めきれません。

最後だけ、陳飛が「貝貝」って呼んでいるのですが、その意味は見る側の想像次第でしょうか。

 

貝家欣が陳飛に話す小王子の話は、星の王子さまですよね。

断片的な使い方ながら、彼らのシーンは星の王子さまと重ねて描かれていると思います。

星の王子さまのどの部分が、というのは、いくつかの解釈ができそうですが、あの物語のメッセージを思いながら陳飛と貝家欣の二人を見ることで、深まりや広がりが出てきます。

星の王子さまという物語の持つ力を借りてさらに映画が魅力的になっていると思いました。

 

とにかく、見てよかったです。

 

吳慷仁については、吳慷仁の演技が見たくて映画を見たけれど、見終わって心に残ったのは「貝家欣」の存在だった、そんな感じです。