天天晴天:台湾ドラマと中華なドラマ

台湾ドラマや中華なドラマの感想を書いています。吳慷仁が好きです。

「風中の縁」(の九爺) 第21話から第23話まで

「風中の縁(えにし)」(風中奇緣)、第21話から第23話。

九爺に心を残しつつ無忌にうっとりしていましたが、九爺に帰ってきました。

 

このドラマの胡歌は下の歯につけた矯正装置が見えることがあり、時代劇だというのにさすが中華だと思っていましたが、上の歯にも装着していましたね。細かいことは気にしない文化なのか、裏側からの矯正ができないといった事情があるのかわかりませんが、矯正装置を見せた状態で登場する男優さんは初めて見ました。でも、結果的に、あまり動かさない口元は、耐え忍ぶ九爺に合っています。

 

以下、ネタバレあります。

 

 

 

中盤以降順調だった無忌と莘月でしたが、この二人だけが順調に進展するわけもなく、ゴールイン間近となって問題発生です。

秦元超が莘月を娶ることは阻止できても、無忌が莘月を正室に迎えることは厳しそうです。皇族の政略結婚などむしろ当たり前。正室に公主を迎え莘月を側室にするという皇帝の案はかなり現実的な提案だと思いますが、無忌は一途です。これまで、何の不足もなく叶えられないことなど無いように思えた無忌についに大きな困難が出現し、ようやく、少しだけ、九爺とのバランスが取れてきた感じがします。

 

泥酔した石風を責める謹言に向かって九爺が言った「つらい時はどこかで発散せねば 長く抱え込むと病になってしまう」は、そのまま九爺自身のことですよね。ずっと探していたのに見つからなかった莘月は、ある日、立ち寄った一品居で食事をしていた、それも無忌と。こんな衝撃にも落ち着いた対応をし、同席することになっても終始紳士的な対応の九爺。莘月どこにいたんだ?!くらい言ってもいいのに、無忌に対しても何も言わず、挑発的な同席の誘いも断りません。九爺、もう我慢することないのに。

自分を抑え続ける九爺は弱く愚かに見えるかもしれないけれど、これは九爺なりの莘月の守り方でもあるのでしょう。

 

九爺、ついに告白。

ああすることがお互いに最善だと信じていた、あまりに大切で幸せにできないのがこわかった、九爺を見ていたらとてもよくわかります。子供を望むかも聞いていましたよね。理由は言わなかったけれど、理由を話せば気にしないと答えるに違いない莘月に対して、九爺は言わないでしょう。そこは九爺の責任感ある優しさでもあると思います。

九爺は言動が一貫していて、こんなときも矛盾がありません。でもそんな真面目さが泣けます。もっと上手にわがままになれたらいいけれど、苦難が多い中、自分の心におさめることでそれを超えてきた九爺には、ほかに方法がなかったのかもしれません。

九爺が家族を作れないと言った意味はこういうことだったのですね。身をもって莘月を守ることができず、莘月が強く望む子供も作れない、あの時代の人の九爺が、莘月が大切だからこそ受け入れられなかったことはよく理解できます。勇気があれば、とか、一歩を踏み出せば、と言うには、彼だけでなく莘月が背負うことになる困難が大きく、踏み出せなかった九爺にこそ深い愛情を感じます。

 

もし莘月の立場なら。今さら言うなんて、と思うけれど、やっぱり聞きたかったかも。どうしてあの時に言ってくれなかったのと思うけれど、言えないこともわかるから、受け止めきれないかも。

 

と考えていたら、すごい形相の無忌がやってきて、莘月を引き離しました。莘月の涙は自分が拭う、と言って彼女を奪うように抱きかかえ去っていきます。無忌は本当に頼りがいがあります。どれだけ九爺に心動かされても、無忌に守られたくなります。

この場面は九爺寄りに見るとかなり辛いです。九爺は、莘月と抱き合っている時、莘月がいるから立っていられたのですよね。彼女が引き離されたことで、杖をすでに手放していた九爺は倒れてしまいます。そして、そんな九爺の前で、莘月を抱きかかえて去っていく無忌。彼女に支えられて立っていた九爺と彼女を抱き抱え連れ去れる無忌との対比はとても象徴的です。九爺が莘月に本心を伝えられなかった理由のひとつが、ここで見せつけるように展開されます。倒れた九爺は、彼女を抱えて立ち去る無忌を追うこともできません。

無忌はここまでしなくても、と思うけれど、ここまでするのが無忌で、それが彼の魅力でもあります。

 

もともと、九爺は達観しています。九爺の後にみると、正室としての結婚ができないだけの莘月と無忌の問題はたいした問題ではないように思えてきます。

“先祖が託した任務は戦を終わらせ砂漠を平和にすること、その任務を果たす人物は自分でも衛無忌でも構わない”。ああ九爺かっこいい。そんな崇高な台詞が言える人間になってみたいものです。

無忌がその身分ゆえに結婚できないことで、九爺にできて無忌にできないことが初めて登場しました。莘月を娶り建安を出ること。それは九爺を突き動かし、達観して抑えられていた心にさざ波を立てる出来事のはず。でも、もう莘月の心は戻らないですよね。無忌は疑って独占欲を発揮していますが、過去には戻れません。