天天晴天:台湾ドラマと中華なドラマ

台湾ドラマや中華なドラマの感想を書いています。吳慷仁が好きです。

「皇帝の恋 寂寞の庭に春暮れて」第29話・第30話

「皇帝の恋 寂寞の庭に春暮れて」(寂寞空庭春欲晚)、第29話・第30話。皇帝と琳琅はとてもお似合いですが、長慶と芸初の二人に魅かれます。

 

30話まで来ましたが、ここまで、常に気になるテーマが存在します。

琳琅と容若、皇帝と容若、皇帝と琳琅、それぞれの関係。納蘭家の娘、容若の姉、そして皇帝の妃としての恵妃、過去と本心を隠し復讐に邁進する長慶、子供の頃から恵妃に仕え続ける納蘭逸、恋する芸初・翠雋・画珠の女官トリオ。こういった主要人物たちの話が、扱われ方の程度は違えど皆、意味を持って描かれているので、登場が少ない人物に関わる出来事にも思い入れをもって見ることができます。とても細い伏線が控えめに張られていて、その線が短すぎず長すぎないところで生かされていく、大掛かり過ぎない丁寧な感じがじっくり楽しめる理由のひとつのように思います。

 

以下、ネタバレあります。

 

 

 

皇帝に殺された両親、兄、妹の仇を討ち、そのあとは自分も家族のもとにいくつもりでいた長慶でしたが、芸初を愛してしまいました。家族の墓前で、芸初のために何もしてあげられない、愛する資格がない、自分はもうすぐ死ぬ、彼女に迷惑がかかる、と独白し、両親に彼女を守るように頼みます。長慶は責任感があり、それゆえに優しく、愛する人を大事にするのですよね。とはいえ、自分が芸初を幸せにすることはできないと思っている長慶は、芸初と距離を置くために冷たく接します。

大切に思っている芸初に対し、心にもない言葉を、芸初が傷つくとわかっていながら発し続ける長慶は見ていてつらいです。そして、自分のことを好きなはず、と思いながらも長慶の言葉に傷つき、ただ涙する芸初にますますつらくなっていきます。この二人は、お互いを思う気持ちがとても純粋で、劇中どの組み合わせよりも幸せにしてあげたくなる二人です。

 

長慶にもらった髪飾りを眺めながら、きっと自分に言えない秘密がある、とつぶやく芸初、お利口。芸初には長慶の本来の姿が見えているのですよね。がんばれ芸初。

 

容若は、何度も何度も、皇帝と琳琅の仲睦まじい姿を目にします。職場が同じだと大変。今、君を守ってくれるのは陛下だ、って、容若、気づくのが遅いです。容若にはそろそろ自分を大切にしてほしい。

 

咳が止まらない芸初のために薬草を取りに行ったものの落とし穴に落ちて足を怪我した琳琅。琳琅を救出したものの長慶達により襲われる皇帝。皇帝を襲うチャンスが到来し見事なスピードで黒服に着替える長慶。早くから助けに向かい素晴らしい腕前を披露したものの結果的に役に立たなかった容若。予想の範囲内のことがわかりやすい流れで進むものの、サクサク進むので飽きません。

崖から落ちた皇帝と琳琅は、洞窟に辿り着き、しばし幸せな時間を過ごします。この洞窟もよく見るような洞窟ですし、怪我をした相手を守りながら、という展開もよく見る展開ですが、琳琅と皇帝の甘いシーンはこれまでそれほどなく進んできたので、新鮮な気持ちで二人の時間を楽しめます。ようやく琳琅が素直に皇帝を想い始め、やっと普通の恋愛関係になったようです。ハウィック・ラウはそれなりの年なだけあって、時々見せる余裕のある雰囲気が素敵ですね。

 

皇帝を襲った刺客がもうすぐ捕まると聞き動揺する芸初。芸初は、確信はないものの長慶が関わったことに気づいています。危険なことはやめて、自分のために悪事から手を引いてと泣きながら訴える芸初も、芸初の前では投げ捨てた靴を大切そうに拾い涙ながらに握り締める長慶も切ないです。この二人、本当に切ない。

 

一方、琳琅と皇帝はすっかり落ち着いた雰囲気。皇帝が、わが心永遠不変なり、と書けば、琳琅は、わが想い万古長青なり、と書いて応え、皇帝が何でも望みを叶えると言えば、琳琅は、皇帝と夫婦の契りを結び永遠に愛し合うことを望みます。第30話まで来てようやく結ばれました。

 

ここ数話、琳琅と皇帝、芸初と長慶の二組が交互に登場するのですが、琳琅が徐々に心を開き仲を深めていく琳琅皇帝組に対し、相手を想う気持ちは明白でありながら長慶の覚悟により距離が置かれ続ける芸初長慶組は、長慶の立場ゆえの悲劇性が際立ちます。長慶が形見となった髪飾りを大切にし、かつて芸初にその姿を重ねた妹、琳琅が、過去のすべてを知らぬまま幸せに過ごしている一方で、ひとり残された長慶は家族の復讐のために大切な芸初さえ手放すしかできない。知らないがゆえの琳琅の幸せに、容若が自分を仇と偽ってまで真実を隠したことの意味を感じます。

 

徹底して芸初に冷たかった長慶ですが、芸初に泣かれて床に落ちたお菓子を口にします。ここまでがんばってきたのに、意外なところで軟化、と思いましたが、ここはお菓子を口にする必要があったのですね。芸初が琳琅に習って作ったお菓子は長慶と琳琅の母の味。芸初への想い、家族への想い。気持ちを抑えきれない長慶が走り出し、手が傷つくほどに樹を殴り続ける様子を見た芸初は、何があったのか、その事情はわからなくても、長慶の複雑な思いを強く受け止めたことでしょう。

  

子供をかばって棚の下敷きになった琳琅は意識を失ってしまいます。そこにやってきたのは、容若。えー・・・。また揺れてしまうではないですか。ここは皇帝でいいのに。どう考えても容若が琳琅と結ばれるとは思えない中、容若が心配です。

 

そして琳琅、早くも過去を思い出しました。家族が惨殺されたことも、皇帝が仇であることも。ほんの少し前、ようやく皇帝と幸せになったばかりですし、長慶の正体が明らかになる伏線もいくつか張られていたので、もっと引っ張るかと思っていましたが、予想外に速い展開です。仮に、もっと無駄に引っ張ったとしても受け入れられるのに、なんて良心的。

 

そして、琳琅は、容若が自らを仇だと偽っていたことに気づきました。

心配してやってきた容若に、琳琅は言います。あなたはバカよ、嘘だったなんて、なぜ本当のことを言わなかったの、私の容若哥哥。そう、容若は恋愛としてはバカなんです。でも、その誠実さが容若の魅力なので仕方ありません。

自分が思い出さなければ一生隠していたかと琳琅に問われた容若は、琳琅には平穏な人生を送ってほしかったと迷うことなく肯定します。容若はそれだけの覚悟をもって琳琅を守ってきたのですよね。

 

琳琅は、かつて、容若が仇だと聞かされた時に刀を突きつけ、愛しながらも嫁ぐことを拒んだように、こんどは皇帝のもとを立ち去る決意をします。皇帝を殺すとまで口にする琳琅。容若の時のように、仇である以上、距離を取り続けるのか、皇帝との関係は深く今回は皇帝に戻っていくのか、琳琅の選択が気になります。